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よみがえれ、えりもの森
- 2007.03.29 Thursday
- 作者名 も
- 21:18
- comments(6)
- trackbacks(2)
- by ぱいぽ
風速10mの風ってどんな風なんでしょう。
気象庁のHPに昔のっていたものを見ると、風速10m〜15mでは、風に向って歩きにくくなり、傘がさせず、道路の吹流しの角度が水平になり、高速道路で乗用車が横風に流される感覚になるそうです。取り付けの不完全な看板やトタン板が飛び始めるとか。
題名の「えりも」は「襟裳」。北海道、日高地方にある、森進一の「襟裳岬」の襟裳です。ここでは、この風速10m以上の風が吹く日が年間290日を超え、風速30m以上になる日も稀ではないそうです。
絵本は、今の襟裳から始まります。
今、襟裳といえば、すばらしいコンブがたくさんとれることで有名な地です。
でも、50年前には、ここは「えりも砂漠」と呼ばれていました。
風は、かわいた土を海にとばす。
雨は、はげ山のどろ水を、海に流す。
沖まで赤くにごった海。
魚もよりつかない。
宝のコンブも、どろコンブとなっていた。
砂嵐がふきあれるため、ほおかむりをして目だけを出して歩いていた人々は砂食い民(スクイタミ)と呼ばれてました。
襟裳地方は、昔から砂漠だったわけではありません。150年前までは「太古の森におおわれて」いて、コンブもたくさんとれたのです。
それが、砂漠になったのは、襟裳に住み着いたコンブとりの人たちのためでした。寒さをふせぐために森の木を切り、「たったの半世紀で、1本の木もなくなった」のです。
山が死ねば、海が死に、やがては、人も生きられなくなるということを
だれも気づかなかった。
そして、50年前、ついに、襟裳を捨ててどこかへ移住しようとまで考えたとき、とうとう人々は立ち上がりました。
「おれたちの手で、海とふるさとを、よみがえらせるべ」
「木をうえて、むかしの森をとりもどそう」
それは、簡単なものではありませんでした。
木を植える前に、まず草を植えていくのですが、風速10m以上の風は、草の種もそれを覆うよしずもふきとばしたのです。
なんとかふきとばされない方法を考え(これは、打ち上げられた海草ーゴタを使った画期的な方法でした)草を植え続け、やっと木を植えられるようになったのは、なんと森をつくろうと考えてから17年後のことでした。
けれども、風に強いクロマツを植えても1週間もしないうちに枯れてしまう。
砂地の下の水のまじった地層を人の手でほり、水を抜く仕事も行われました。
ここの描写には、すさまじい執念を感じます。
森作りから20年たって、ようやく百人浜にクロマツの小さな森ができました。
森はまだまだ遠かった。
何年も何年もかけて森は少しずつ大きくなります。そして、40年ぶりにやってきた流氷により、海に運ばれた砂が掃除されたとき、森のめぐみが海にそそぐようになったのです。
魚がもどり、コンブの森が生まれた。
今、クロマツの森にはカシワの木が植えられているそうです。
えりもの人たちの森づくりは、おわらない。
…(中略)…むかしの森をとりもどすまで、何代もかけて、木をうえつづける。
漁師の方の言葉。
「おれは、コンブ漁師だが、半生は山にかけた。
漁師だから、海のことだけ考えていればいいんでない。
山があれると、海もあれるんだ。
五十年たって、心からおもう」
人間は、自然の中で生きています。でも、それを忘れてしまい、たったの50年で、簡単に砂漠になってしまった襟裳の地。
簡単に失われたものでも、それを取り戻すためには、たくさんの人々の執念にも似た努力による長い長い年月が必要だということをこの本は教えてくれます。50年たっても、まだ森づくりは道半ばなのです。
また、流氷による海の掃除がなされなければ、人間がどれほど森づくりに努力しても、コンブは戻らなかったという事実。人間の力でできることは、本当に限られているのだと感じます。
でも、自然が手をさしのべてくれたとき、もし砂漠のままだったらコンブの豊漁は一時のことで終わったでしょう。
襟裳の地にかぎらず、人間の努力と自然の恵みのどちらも欠けては、消えてしまった自然をよみがえらせることはできないのでしょう。
対象は4年生以上だと思います。大人にもおすすめ。
昔、NHKの「プロジェクトX]でも取り上げられた話です。
よみがえれ、えりもの森
本木洋子/文 高田三郎/絵
出版社名 新日本出版社
出版年月 2003年9月
ISBNコード 978-4-406-03028-1
(4-406-03028-X)
税込価格 1,575円
頁数・縦サイズ 31P 25cm
よければぼちっとしてもらえるとうれしいです
気象庁のHPに昔のっていたものを見ると、風速10m〜15mでは、風に向って歩きにくくなり、傘がさせず、道路の吹流しの角度が水平になり、高速道路で乗用車が横風に流される感覚になるそうです。取り付けの不完全な看板やトタン板が飛び始めるとか。
題名の「えりも」は「襟裳」。北海道、日高地方にある、森進一の「襟裳岬」の襟裳です。ここでは、この風速10m以上の風が吹く日が年間290日を超え、風速30m以上になる日も稀ではないそうです。
絵本は、今の襟裳から始まります。
今、襟裳といえば、すばらしいコンブがたくさんとれることで有名な地です。
でも、50年前には、ここは「えりも砂漠」と呼ばれていました。
風は、かわいた土を海にとばす。
雨は、はげ山のどろ水を、海に流す。
沖まで赤くにごった海。
魚もよりつかない。
宝のコンブも、どろコンブとなっていた。
砂嵐がふきあれるため、ほおかむりをして目だけを出して歩いていた人々は砂食い民(スクイタミ)と呼ばれてました。
襟裳地方は、昔から砂漠だったわけではありません。150年前までは「太古の森におおわれて」いて、コンブもたくさんとれたのです。
それが、砂漠になったのは、襟裳に住み着いたコンブとりの人たちのためでした。寒さをふせぐために森の木を切り、「たったの半世紀で、1本の木もなくなった」のです。
山が死ねば、海が死に、やがては、人も生きられなくなるということを
だれも気づかなかった。
そして、50年前、ついに、襟裳を捨ててどこかへ移住しようとまで考えたとき、とうとう人々は立ち上がりました。
「おれたちの手で、海とふるさとを、よみがえらせるべ」
「木をうえて、むかしの森をとりもどそう」
それは、簡単なものではありませんでした。
木を植える前に、まず草を植えていくのですが、風速10m以上の風は、草の種もそれを覆うよしずもふきとばしたのです。
なんとかふきとばされない方法を考え(これは、打ち上げられた海草ーゴタを使った画期的な方法でした)草を植え続け、やっと木を植えられるようになったのは、なんと森をつくろうと考えてから17年後のことでした。
けれども、風に強いクロマツを植えても1週間もしないうちに枯れてしまう。
砂地の下の水のまじった地層を人の手でほり、水を抜く仕事も行われました。
ここの描写には、すさまじい執念を感じます。
森作りから20年たって、ようやく百人浜にクロマツの小さな森ができました。
森はまだまだ遠かった。
何年も何年もかけて森は少しずつ大きくなります。そして、40年ぶりにやってきた流氷により、海に運ばれた砂が掃除されたとき、森のめぐみが海にそそぐようになったのです。
魚がもどり、コンブの森が生まれた。
今、クロマツの森にはカシワの木が植えられているそうです。
えりもの人たちの森づくりは、おわらない。
…(中略)…むかしの森をとりもどすまで、何代もかけて、木をうえつづける。
漁師の方の言葉。
「おれは、コンブ漁師だが、半生は山にかけた。
漁師だから、海のことだけ考えていればいいんでない。
山があれると、海もあれるんだ。
五十年たって、心からおもう」
人間は、自然の中で生きています。でも、それを忘れてしまい、たったの50年で、簡単に砂漠になってしまった襟裳の地。
簡単に失われたものでも、それを取り戻すためには、たくさんの人々の執念にも似た努力による長い長い年月が必要だということをこの本は教えてくれます。50年たっても、まだ森づくりは道半ばなのです。
また、流氷による海の掃除がなされなければ、人間がどれほど森づくりに努力しても、コンブは戻らなかったという事実。人間の力でできることは、本当に限られているのだと感じます。
でも、自然が手をさしのべてくれたとき、もし砂漠のままだったらコンブの豊漁は一時のことで終わったでしょう。
襟裳の地にかぎらず、人間の努力と自然の恵みのどちらも欠けては、消えてしまった自然をよみがえらせることはできないのでしょう。
対象は4年生以上だと思います。大人にもおすすめ。
昔、NHKの「プロジェクトX]でも取り上げられた話です。
よみがえれ、えりもの森
本木洋子/文 高田三郎/絵
出版社名 新日本出版社
出版年月 2003年9月
ISBNコード 978-4-406-03028-1
(4-406-03028-X)
税込価格 1,575円
頁数・縦サイズ 31P 25cm
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くっくです。この名前、鳥ということでつけたほかはなんの意味もありませんが、気にいってます。カウンターの数字は「スランになりたいな」からのものです。数字が消えてしまうのはちょっと悲しかったので……。「スランの本棚」のカウンターはこれから7700をひいたものです(^^ゞ
キアです。ヴォクトの「スラン」に出てくるなかなか重要な登場人物キア・グレイの名前から拝借しました。ペットの名前に使われたと知ったら怒られそうです。
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- ブログ「スランの本棚」のスランはヴォクトの古典的名作SF「スラン」からとりました。 スランというのは、新人類で、人の心を読むことができたり、知覚力や知力が現(?)人類よりはるかにうわまわっています。迫害され、表舞台からは姿をけしています。主人公のジョン・トマス・クロスはまだ9歳のスランの少年。人類や無触毛スラン(スランには触毛があるんです)に対して憎悪を持ちながらも、成長し能力が成熟していくなかで共存の道を模索していきます。 ね、なかなかいい感じでしょう。 前の「スランになりたいな」を始めるときに、たまたま「スラン」を読み返していたため勢いでつけました。勢いでつけたわりには気にいっています。 でも、この「スラン」絶版になっています。さびしいなあ。 ちなみに、昔アニメにもなった竹宮恵子の「地球へ」の主人公、ジョミーは、この「スラン」の主人公ジョン・トマス・クロス にちなんでいるそうです
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