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  • 2008.11.03 Monday
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桃花片

岡野薫子さんの「桃花片」(とうかへん)

昔、国語の教科書で読み、とても印象に残っていたのに、書名も作者も忘れていた作品です。

半年ほど前、本屋で立ち読みをしていて見つけました。

「教科書にでてくるお話6年生」(ポプラポケット文庫)
という本にのっています。

個人的に、こういう「潤オ○年生」とかいう本は好きじゃありません。
普通読もうという気にはなれないのですが、子供が本を選ぶのを待っている間に手にとってぺらぺらと目次を見ていると、この名前が……。

東京書籍の教科書にのっているようですが、これまで東書の教科書を使ったことはないはず……昔は違う教科書でもこの作品を扱っていたのかしら?

それはさておき、この作品にひかれ、思わず買ってしまいました。


名人と言われ高価な壷や皿をつくっている楊(ヤン)という老陶工。
「壷を二十に皿を十、
 壷を二十に皿を十。」

この作品で鮮明に覚えていた文章の一つがこれ。リズムの心地よさ?それとも、このことばによって感じる匂いのようなものが心をとらえたのかしら?

楊の回想。
地味な日常に使うやきものばかりを作る父親。
「おとうさん、もっといいものが焼いてみたくないの。」
と言った楊の求めるものは、鑑賞できる華やかなやきもの。

父は、そんな息子をさとします。
「なにかに使うからと言って価値はさがりはしないよ。」
「おまえの壷はきびしすぎる。」
「おまえのそういう、はやる気持ちが、壷をそこなっているのだが……。」
「なにも着せないはだかの壷は、ごまかしもなにもききはしない。…(中略)…あとからいくらかざったところで、ごまかしきれるものではない……。」

自分の道をすすみ、名人と呼ばれるようになって楊は、選んだ道がよかったのかと考えるようになります。
子どもの頃に絵つけした素朴なかざり皿と白磁のつる首にかなうようなものを、自分はまだ、つくっていないような気にさえなります。

年老いた楊は、やがて、見事な名器に出会います。
それが、
「桃花片」の水滴(硯用の水差し)

ーおだやかな色、あたたかな春の感じー
ーこの小さな一つの水滴にこめられた、陶工の命 魂 に肌でふれた思いであったー

そのうらをかえしたとき、楊はそこに父親がつつましくしるした刻印を見たのです。

桃花片の描写がすばらしい。
ーその水滴の、わずかにむらさき色のかかったうす桃色の地には、くれないの小さな点が、いくつとなく、雲のようにむらがっている。それらの点は、かさなったり、わかれてぼかされたりしながら、まるみをおびた水滴全体が、けむったような花ぐもりの感じをただよわせている。−

ため息の出るような描写です。
文章は覚えていなかったけれど、水滴の美しさが心に残っていたのは、この文によるものだったのか……。

子どもの頃はよくわからなかったのですが、今こうやって読むと、内容の深さ、細やかな描写に、すばらしい作品だなあと思います。日本語の美しさに触れることができました。

挿絵がいくつか入っていますが、この作品には必要なかったと思います。特に最後の絵は心のなかでつくりあげていた水滴の美しさを微塵に砕いてしまいました。

読み聞かせたことはないですが、このよさは、高学年なら感じ取ってくれるかな。
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  • 2008.11.03 Monday
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  • 06:29
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コメント
そうですね。。
情緒ある日本語です☆
日本人の私もこんな日本語は書けない、話せません(;;)
日本語の奥深さや美しさを再認識しました。
ぱいぽさんが言われるように、この言葉で想像してしまいました。。
”桃花片”きれいな響きです♪
  • magu7 オバサンです☆
  • 2007/02/26 12:50 PM
magu7さん こんばんは♪
美しいですよね。こういう日本語を自在に操れるのってすごいなあと思います。っていうか、すごいなあしか言葉がない自分が悲しい(^^ゞ
懐かしいなぁ 桃花片。
小学校の時校内放送でやっていたよ。
やわらかくしなやかな表現が子供心にたまらんかった。
父と子の心のすれ違いと桃花片を介しての邂逅が素晴らしい展開だなと思いました。
  • さく
  • 2008/11/22 11:36 AM
こんにちは
小学生のころ、模試で読んで、
続きを読みたい!と思った本です。
(私の教科書には載っていませんでした)

当時、大手本屋などで検索して貰いましたが
どうしても見つからず、読めませんでした。

今日、ふと思い出し検索してみたら、このサイトに。

すぐに入手して読みたいと思います。
ありがとうございました(^^)
  • つな
  • 2011/04/29 10:22 PM
長い間探していたやさしい心を取り戻したような気持ちです。
こんな素敵な描写があったとは驚きでした。是非入手して精読したいです。
ありがとうございました。
  • META(かとう)
  • 2012/12/19 2:35 AM
こんにちは。YaHoo知恵袋を見ていて、この小説のことを知り、どこかで読めないかと検索していたら、このブログにたどり着きました。

小説家の絶妙な表現に心を魅かれることは、眼前に絶景を見たときと同じような感慨深いものがありますね。

当方、滅多に小説とか読まないのですが(5〜6年に1作品くらいです)、昨年村上春樹の1Q84を読みました。そのなかで牛河という男が、アパートの一室で殺し屋に遭遇する場面がありましたが、その描写はかなりの緊迫感があり、小説でもこれほどのスリルが出せるものかと感心したことを思い出しました。

ただ個人的な趣向から難を言えば、いい小説なのだろうとは思いますが、どこか共産主義的な臭いがしますね。まあ、小説というものの多くはそうなのかもしれませんが・・。
  • someone
  • 2013/01/16 9:28 PM
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ブログ「スランの本棚」のスランはヴォクトの古典的名作SF「スラン」からとりました。 スランというのは、新人類で、人の心を読むことができたり、知覚力や知力が現(?)人類よりはるかにうわまわっています。迫害され、表舞台からは姿をけしています。主人公のジョン・トマス・クロスはまだ9歳のスランの少年。人類や無触毛スラン(スランには触毛があるんです)に対して憎悪を持ちながらも、成長し能力が成熟していくなかで共存の道を模索していきます。 ね、なかなかいい感じでしょう。 前の「スランになりたいな」を始めるときに、たまたま「スラン」を読み返していたため勢いでつけました。勢いでつけたわりには気にいっています。 でも、この「スラン」絶版になっています。さびしいなあ。 ちなみに、昔アニメにもなった竹宮恵子の「地球へ」の主人公、ジョミーは、この「スラン」の主人公ジョン・トマス・クロス にちなんでいるそうです
                
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